505.小説を英語で読む 半七捕物帳「奥女中」

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文久2(1862)年8月14日の夕方、茶店を営むお亀が娘のお蝶のことで相談があると、半七を訪れた。お蝶が武士や奥女中にかどわかされ、ときどき影を隠すというのである。お蝶の話では、どことも知れぬ武家屋敷で美しい着物を着て座っているだけ、しかし時に正体の分からぬ何者かが娘の様子を見に来るのだ。恐ろしさに震えたお蝶が泣いて頼んだので、前の二度は十両の礼金と共に返してくれたが、三度目の今回は二百両の金でお蝶を貰い受けたいと、奥女中が懇願してきたという話に、さすがの半七も思案投げ首であったが…。翌晩現れた奥女中に、半七が取った意外な態度は?

事件の解決は時に当事者たちの人生を変えます。発端は悪意でもその目的、真意次第で善にもなり得るのでしょうか?😎

 

小説のはじめは...... ↓

奥女中

 半月ばかりの避暑旅行を終って、わたしが東京へ帰って来たのは八月のまだ暑い盛りであった。ちっとばかりの土産物を持って半七老人の家をたずねると、老人は湯から今帰ったところだと云って、縁側の蒲莚カマゴザのうえに大あぐらで団扇をばさばさ遣っていた。狭い庭には夕方の風が涼しく吹き込んで、隣り家の窓にはきりぎりすの声がきこえた。

虫の中でもきりぎりすが一番江戸らしいもんですね

 と、老人は云った。

そりゃあ値段も廉いし、虫の仲間では一番下等なものかも知れませんが、松虫や鈴虫より何となく江戸らしい感じのする奴ですよ。往来をあるいていても、どこかの窓や軒できりぎりすの鳴く声をきくと、自然に江戸の夏を思い出しますね。そんなことを云うと、虫屋さんに憎まれるかも知れませんが、松虫や草雲雀クサヒバリのたぐいは値が高いばかりで、どうも江戸らしくありませんね。当世の詞コトバでいうと、最も平民的で、それで江戸らしいのは、きりぎりすに限りますよ

 老人はしきりに虫の講釈をはじめて、今日では殆ど子供の玩具にしかならないような一匹三銭ぐらいの蟋蟀キリギリスを大いに讃美していた。そうして、あなたも虫を飼うならきりぎりすを飼ってくださいと云った。虫の話がすんで風鈴の話が出た。それから今夜は新暦の八月十五夜だという話が出た。

 

🎦youtubeの対訳動画はこちらです。↓youtu.be

📖対訳テキストはこちらです。↓ *和文→英訳 有料

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 学習ポイント😐

和文→英訳→音声はイメージしやすく読みやすく聴きやすいです。

和文だけでも味わい深い内容を楽しめます。😎

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